とりあえず、なんか書きますか。

はてなブログに引っ越してきました、読書メモと日記を不定期に書いていくブログです。不定期なのは、相変わらずです。

日本再建イニシアティブ「福島原発事故独立検証委員会・調査検証報告書」

久しぶりの読書メモです。買ってから1ヶ月かかって読み終わったために久しぶりになりました。長くかかったのは年度末・年度初めで忙しかったことと、この本の分量が多かったことによります。
しかし、読んで良かったと言える本です。原発事故については日々新聞とかのニュースで報道されていますが、日々報道されていることでかえって断片的になり全体像が見えにくくなっていると思います。だからこそ、ある一定の「まとめ」という視点で振り返ることで、全体像がつかめるようになるのかなと思うのでした。
で、読後感ですが、以下の通りです。

  • 日本の行政のあり方の限界、というのを強く感じた。日本型行政では、「前例がないものはやらない」というのが一般である(なぜなら、前例がないものには予算がつかない。)。そのため、今回のような前例がないレベル7の事故への想定もできなければ対応もできない結果となる。原発事故のようなリスクが巨大なものについては、本来は「事前に最大リスクを想定し、それに対応できる制度がどのようなものかを検討して、実現可能なものから整備する。」という流れになるべきである。「リスク」というのは本来は確率と影響の大きさの両者を含んだ概念だが、日本では(特に行政では)それが正確に理解されていないのだろうと思った。
  • 原発事故への対応について官邸がどうのこうのという話があるが、一番ひどいのは地元自治体の原発事故への対応体制が全く機能しなかったことだと思った。当然のことながら、津波原発事故という両者に対応しなければならないという想定外の事態であったことは分かる。しかし、原発が立地している地元自治体は規模が小さすぎて危機対応するための人員が確保できないということが痛感された。地元自治体は、原発事故による対応ができる規模まで統合する必要があるのではないかと感じた。しかし、地元自治体は交付金や税収によって財政的に豊かなので、いまの仕組みでは統合するインセンティブが働かない問題点があり、これを解決すべきと思った。
  • 一番重大なのは、東京電力が迅速に情報を提供しなかったことや、原子力安全・保安院が機能しなかったことだと思った。東電は官邸や地元自治体のみならず、原発事故対応のために来た自衛隊や消防に対しても必要な情報を提供しなかったということはかなりひどいことだと言える。また、保安院原子力規制の中核を担っていながら、危機への対応の際にはほとんど役に立っていなかった。東電の危機管理体制の強化と保安院の組織そのものの見直しがなければ、原発の再稼働なんてありえない、と感じた。

もちろん、原発事故を防いだり、その影響を低減するための技術的な措置を講じていくことも非常に重要ですが、今回の重大事故からなにを学ぶかということはすごくいろいろあるのだと思ったのでした。

福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書