とりあえず、なんか書きますか。

はてなブログに引っ越してきました、読書メモと日記を不定期に書いていくブログです。不定期なのは、相変わらずです。

大崎善生著:「孤独か、それに等しいもの」(角川文庫)

紀伊國屋書店新宿本店の本のまくらフェアで買った本の2冊目です。本のまくら(書き出し)は、

その八月の日の朝、私は確実に何かを失おうとしていた。

ということです。この書き出しで手にとって買ってしまう私も何かを失おうとしていたのかも知れません(笑)。
でも、本の内容を考えると、この書き出しは秀逸だなあと読み終わってみて実感します。なぜなら、この本に書かれていることは、「喪失と再生」のストーリーなのです。喪失というのは抽象化すれば「死」とかいろいろあるかと思いますが、人が生きていく事自体、死に向かっていく一度きりの自分の人生の「喪失」とも取れるわけで、それを小説として端的に、まあスキー的な用語で言えば「エッジが立つように」描いているのがこの本の特徴なのかなあと思いました。
この本は5つの短編から構成されていて、エッジの立っている4編と、エッジの立っていない1編から成り立っていますが、面白いことに、エッジの立っている4編の存在のおかげで、エッジの立っていない1編が輝いて見えるのでした。それがこの短篇集の良い所なのかと思います。劇的でないことがいいのかなあと。
何かを失うことで、何かを見つけることができるとしたら、それはとても大きな意味のあることなのではないかなと思うのでした。そういう面で、自分にとっても「40代も多くのことを失いながら何かを見つけることができると良いな」と、ポジティブに思える感じが残りました。

孤独か、それに等しいもの (角川文庫)

孤独か、それに等しいもの (角川文庫)