村上春樹著「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」(文藝春秋)
とりあえず読みました。Amazonで予約して発売日に届いていたのですけど、週末はしっかり身体を動かすレクリエーションをしていたので、読み終わるのが今になってしまいました。しかし、Amazonのレビューを見ていると賛否両論ですね。こういう賛否両論になるのは、やはり村上春樹作品の期待値の大きさなのかなあと思います。
で、自分も予約して買っているぐらいなのでしっかり期待をしていた側の人間ではあるのですけど、まあ率直に読んだ直後の感想を書いておきたいと思います。
- 「ねじまき鳥」や「1Q84」の「濃密な物語空間」を期待すると、とても肩透かしを食います。自分も最初は「物語空間」を期待していたのですが、途中でこれは「国境の南、太陽の西」なんだと思えたあたりからよい諦めがついて普通に読めるようになりました。まあ、そんな小説なのかなと思います。自分にとって。
- 読んでいて「これは伏線なのか」と思ったことはなんというかほとんど回収されないで終わってしまうので、正直、「え〜〜〜〜〜」という感じです。この「え〜〜〜〜〜」感はすごいです。
- とはいえ、この小説はすごく現実的なところにあるのかなと思いました。自分のことを「こういうタイプの人間だ」とかって色づけてそれをロールプレイングみたいに生きる生き方もあると思うのですが、多くの場合それとは違い、「自分ってどういうタイプの人間だかよく分からないけどとりあえず生きている。」みたいな日常が過ぎて、そして歳を取って死に近づいて行くのが人生なのかなと思ったりします。そこには物語もなければ意味もない。色彩すらないのかも。でもそこに何らかの物語や意味や色彩を見いださないと生きていけない平凡な生き物が人間なのかなあと。なので、この不完全な物語というのはすごく人間っぽいと思いました。
結果的にこの本に何かを期待して読むと肩透かしです。まちがいなく。
でも、仕事に疲れたときにどこかの浜でぼーっとしながら読むのには最適だと思います。そういう価値のある本だと思いました。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/04/12
- メディア: ハードカバー
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