村上春樹「東京奇譚集」
実家の近くのブックオフで全品半額セールをやっていたので、いろいろと買い込んだのですが、そのうちの1冊です。久しぶりの村上春樹です(といっても訳本は最近読んでますけど。)。
「東京奇譚集」は短編集なのですが、村上春樹の短編集は結構好きです。うまく言語化できないのですが、短編作品には長編にはない独特の「もや〜ん」とした感じがあって、それが好みなんです。この短編集もそういう「もや〜ん」とした感じがあって良かったです。
僕が読んだところ、この短編集のテーマは「会遇」なのかと思いました。「偶然の出会い」によって、少なからず人生が変わっていくような、そんな物語です。少なからず心打たれました。
東京に10年以上住んでいるものとしてみると、「奇譚集」の前に付いている「東京」にその特別さが感じられるのかなと事前には思っていましたが、ストーリー的には「大阪」でも「名古屋」でも成り立つような話です。でも、「大阪奇譚集」「名古屋奇譚集」だとやっぱりその都市独特のカテゴリ的な感じになってしまい、ちょっと特殊な話になってしまうかなと思いますが、「東京奇譚集」だとそういう感じがしないです。つまりは「東京」というのはあまりそういう独特のカテゴリを持たないイメージの街なんだなということを感じました。そして、そういういわば無名の大都市において起こる、偶然の出会いの話なんだなあと実感しました。
個人的には、「日々移動する腎臓の形をした石」と「品川猿」が良かったです。後者はストーリーがまとまりすぎていますが、そのまとまりを猿という特異点が崩すことによって面白さを作り出しています。前者は…出色ですね。読んでしびれました。良い読後感を味わえる短編集です。心が疲れているときとかにおすすめなんじゃないでしょうか(笑)。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/11/28
- メディア: 文庫
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