とりあえず、なんか書きますか。

はてなブログに引っ越してきました、読書メモと日記を不定期に書いていくブログです。不定期なのは、相変わらずです。

アゴタ・クリストフ:「昨日」(ハヤカワepi文庫)

この本は紀伊國屋書店新宿本店で先月までやっていた「本のまくら」フェアで手にしたものです。なので、著者も題名も分からずに一行目のみで決めて買った来たのですけど、その一行目は、

昨日、心当たりのある風が吹いていた。以前にも出会ったことのある風だった。

という感じです。
中身ですが、亡命者の話でした。なるほど、「昨日」ですね。この本の主人公は亡命者なのですが、亡命先でも人生を生きているのか生きていないのかわからないような単調な日々を送っていて、その「昨日」である故郷に対して自分では明確には思っていなかった郷愁のようなものを持っているわけです。それが一人の女性として描かれているのですけど、カクカク・シカジカあって、結局はその女性として描かれた故郷(=昨日)にも居所がないことが分かるわけです。
自分は亡命者でもなんでもないのですが、例えば「少年時代」とか「大学のころ」とかにノスタルジックな気持ちを持ったりすることもあるのですけど、そういうことも結局はこの本のようにいまの自分がそこに居所を持っているわけではないのかなとも思ったりしました。まあ、自分は本当に故郷を失っている亡命者のような存在ではないので、そういう甘っちょろいようなものではないのでしょうけど。
しかし、この本のまくらフェアで、大学時代に気になっていたアゴタ・クリストフの作品に出会ったのも事実なのでした。そういう意味で、意外な「昨日」との出会いでした。

昨日 (ハヤカワepi文庫)

昨日 (ハヤカワepi文庫)