川上未映子「ヘヴン」
金曜日の二日酔いが抜けたあとの夜に近所にウォーキングに出かけて、ふと駅前の古くからある本屋に立ち寄って買った本です。駅前の本屋ってAmazonとか大型書店とか携帯電話とかのために商売としてはかなり傾いてきているのだろうなあと思っているのです。しかし、本好きの娘が小学校の生活科の時に町のお店の取材としてその駅前の古くからある本屋を選んだので、なんか「そういう本屋がなくなると悲しいよなあ」というちょっと子どもじみたノスタルジックな感覚を持ったため、ときおりその駅前の本屋で本を買うようにしなくては、ということを思ったりしているのでした。
で、思うのはいつでもできるのですが、なかなか実行に移していなかったので、その金曜日の夜に立ち寄って「なにか買おう」ということで平積みにされているこの本を選んだのでした。そういうぐらいのセレクトです。
という経緯で買った割には、積ん読が多かったこの頃だったのに一気に読んでしまいました。で、読んだ感想ですが、以下のとおりです。
- いじめられっ子の心理はけっこうきっちり書けているように思いました。まあ、自分の限られた感覚の中でそう思っただけですが。そういう部分で、話題作になってくれていることは意義があるんじゃないかと思ったりします。
- 生きるということに意味を見出そうとする思いと、生きることにそんな意味はないという対話があるのですが(これが本小説の主題かもしれませんが。)、読んでみて自分がその課題に関してどう感じているのかよく分からないなあと思ったのでした。ただ、通過儀礼的に耐えることに意味があるという考え方はいろいろ普遍的な部分もある気もするけど、そうやってなんでも耐えなくてはならないと考えるのもなんか違うような気がしたのでした。
- 結局、「ヘヴン」というのはなんなのかよく分からないままに終わってしまうのですが、まあそれが良い所なのかもしれません。通過したことにより現れた最後の2ページが「ヘヴン」というにはなんか簡単に得られ過ぎのような気もするのですが、どうなのかなあ。視覚体験というのは共有できないのでよくわからないのでした。
「不惑になったからどうだ?」と聞かれてもまったく実感もなければ実体もないような感じでなんの変化もなく生きている自分からすればあまり批評的なことは言えない感じがする小説です。そういう原石のような「生きる」ということに対する問いかけを小説としてまとめることへの作者の意欲というのを強く感じました。
ということで、平積みをふと買ってみるのもよいことだなあと感じた週末でした。
- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/05/15
- メディア: 文庫
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