黒井千次著「働くということ 実社会との出会い」(講談社現代新書)
久しぶりに読書メモです。新書判だとそれなりに速く読めます(笑)。
夏目漱石の「道楽と職業」についていろいろネットで調べているうちに、この本がお勧めされてみたので読んでみました。この作者のことは知らなかったのですが、いったん普通に就職して15年働いてから作家になった方だそうで、その15年働いた中での「働くということ」ということを作家なりにまとめて本にされたものだそうです。で、読んでみた感想:
- 就職前や入ってすぐ、その後など、いろいろなステージで作者が感じたことが正直に書かれていて好感を持ちました。いま振り返ると自分も「働くということ」をよく分かっていなかった部分がほとんどだなあと思いますが、読みながらそんな自分の事を振り返ることが出来ました。
- この本が全体として論理的になにかを積み上げていって読者にひとつの事を訴えかけるのではないので、読んでみると若干散漫な感じもあります。ただ、生きていく事って論理的に何かを積み上げていく事ではないので、そういう書き方に共感を持ちました。
- この本は作者の思いである、「仕事というのは単にお金を稼ぐために働くのではない」「働くことを通じて自己実現を図っていくことこそ働くということの重要さ」というシンプルなメッセージを伝えている内容ですが、それ以外の考え方を完全に否定していないところが良いと思いました。「自己実現」と感じて働くことができないこともあると思いますので、一本調子な「労働礼賛」というのはかえってブラックな働き方に繋がるように思います。
ということで、なんだか就職したときからの自分を振り返るのに良いきっかけになりました。奇しくも私もこの3月いっぱいで働き始めてからちょうど15年になるので、面白いタイミングで面白い本に出会ったなあと思いました。もちろん、15年目限定ではなく、いろいろな人がいろいろなタイミングで読んでも面白いのかなと思います。
- 作者: 黒井千次
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1982/03/17
- メディア: 新書
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