太田猛彦著「森林飽和 国土の変貌を考える」(NHKブックス)
ずいぶん前に買っていた本なのですが、ばたばたしていて読む機会がなかったので、夏休みの課題図書的に読んでみました。森林に行く訳ではないのですけど、森林と砂浜とがつながっていて、そういう意味では夏休み的な本でもありました。で、感想を:
- 江戸時代も含めて昔は山はかなりの部分が禿げ山だったということを知ってかなりびっくりでした。自分の中の山のイメージは森が鬱蒼としている感じなのですが、そういう森が出来たのは昭和に入ってからということだそうで、「青山」みたいなのが「日本人の原風景」とか思ってしまうのは近視眼的な発想だということを知りました。
- 森と砂浜のつながりもほとんど意識していなかったのですが、森が出来てきたことにより土砂の供給が減り、そして砂浜が減って行くというある程度分かりやすい図式で説明されていて、なるほど、と思いました。もちろん、ダムが出来てそこで砂が止まったり、川の砂を使ったりして減ったりという面も大きいと思うのですが、砂浜に行ったときに「この砂はどこから来たのだろう」とこれまであまり思わなかったなあと実感しました。砂浜の砂は山から来ているということをよく分かった上で海水浴したいと思います(笑)。
- そしてもっとも目からウロコだったのは、「森が出来ると水は減る」という話でした。よくよく考えてみれば植物は水を使うので当たり前なのですが、禿げ山が森林に覆われるとトータルの水の流出量は減ってしまうということをちゃんと考えたことはありませんでした。もちろん、禿げ山が森林になることのメリットも多いのですが、単に樹木を増やすだけではマイナスの面もあるということを理解しました。
トータルでみると、これまでの日本人がいかに森と関わって(森から資源を収奪して)生きてきていて、そしていまの日本人がいかに森と関わらなくなっているか、ということを知ることが出来る本です。山に登ったり、海に行ったりすることが好きな人には読んでほしいなあと思いました。
森林飽和―国土の変貌を考える (NHKブックス No.1193)
- 作者: 太田猛彦
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/07/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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